ご挨拶

― どうしてそんなに探したいの ―

名誉学長  原田 治子

 平成最後の夏は、これまでに体験したことがないほどの猛暑でした。いや、酷暑といった方がいいかも。それにもかかわらず、学園祭をみごとに成功させたみなさんの精神力はすごい。この暑さにめげず、あれだけの作品を仕上げたのですから。90歳100歳まで生きることが珍しくなくなった今、身体のあちこちが故障したり、認知症になる可能性は誰にでもあります。この老いの現実にしっかり向き合い、目標を持って生きるシルバー大学生の姿はとても美しい。

 私ごとですが「頭のふらつき」を感じ始めたのは3年ほど前から。次第におかしくなり、頭や耳への圧迫感、視力の衰え、声が鼻の奥にこもる。ふらつきはひどくなるばかり。耳鼻科、脳神経内科、目まい専門科…。

 いくつもの病院で検査や薬の処方。診断の結果は自立神経失調症やら脳過敏症、特別わるいところなし。しかし何と言われても頭のふらつきやバス酔いのような気持ちのわるさは我慢できない。
そこで3年ほど前に掛った脳神経外科を再度受診。

 30分ほどで終わったMRIの画像をみながら「3年ほど前のものと全く変わっていません。40代のようなきれいな脳です。今の症状は脳の異常によるものではありません」「それでは、どこを調べればいいでしょうか」「どうしてそんなに探したいの。緊急を要する病気は別として、年をとるほどに不調な部分はぽちぽち出てきます。これは極く自然なこと。時を変えところを変えて顔を出す症状に自分を適応させ、手だてを考えながら残りの人生を楽しみましょうよ」

 あれこれ病名をつけ薬を出してくれた医師とは全く違う。「どうしてそんなに探したいの」からはじまったおよそ20分は、医師と患者ではなく、人間と人間との対話でした。生きることは老いること、この現象に左右されず、自分の知恵で工夫をしながら残りの人生を大切に楽しく生きるべしと。

 病気そのものと、患者の心のゆらぎを鋭く観察し、優しく包み込む名医に出会ったこの日(8月7日)から、私は「頭のふらつき」の原因追及を止めました。

 生きることは老いること、老いることは生きることを自覚し、優しい思いやりの手で結ばれている私たちの学校には、人生の名医がたくさんいるのです。

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